5. 日本は菌まで奥ゆかしい

 私が好きなものはお酒、音楽、文鳥、着物、麹料理。着物を着て好きな音楽を聴き、お酒を飲んで麹料理を食べ、隣に文鳥がチュンチュンと鳴いていたら、とてもとても幸せ。麹が好きなものは水、酸素、快適な温度(35℃前後)、デンプンや糖、アミノ酸、ミネラルなど。できたての麹はほんの少し水分を含んでいるので生きていますが、完全に水分がなくなると休眠します。1年くらいは眠ったまま、死にません。
 眠っている麹に水分を与えて快適な温度にしてやり、ごはん(デンプンや糖など)をあげると、麹は喜んで活動します。私なら音楽に合わせておしりをふって踊るくらいですが、麹は違います。食物の中に入り込んで、酵素を出します。酵素はタンパク質をアミノ酸に、デンプンを糖に変えます。アミノ酸とは、日本人が大好きな「うまみ」です。おいしい上に若々しい肌や髪を作ったり、健康な身体づくりにも欠かせません。糖も甘くておいしいですよね。しかも身体や内臓を元気に動かすエネルギーになります。
 ですが麹のすごさはそれだけではないんです。麹の酵素が食物の中に入り込む途中で食物の組織が壊れます。という事は、例えば麹に漬けた肉や魚などは、柔らかくなって食べやすくなります。それに栄養成分が身体に消化吸収されやすいようになるのです。どうせ食べるならその食品の栄養分をしっかりと吸収できる方がいいですよね。
 つまり麹という小さな小さな菌に快適な環境を与えてあげると、麹は喜んでたくさんの酵素を出します。麹の酵素は食物をおいしく、柔らかくし、その食物がもつ栄養分を健康や美容に有益なものに変え、体内に吸収しやすくしてくれるのです。すごいでしょう。おしりをふるだけの私とは全然違います。
  昔から日本人は控えめで奥ゆかしいと言われています(最近はそうでもないけど)。麹も昔からせっせと私たちの為に働いてくれているのに、目に見えなくて目立たないせいか、日本人でさえ麹の事を知らない人が多いのです。日本は菌までも控えめで奥ゆかしい! そんなところがまた可愛らしくて愛しいのです。

 




じゃがいもとエリンギのバター醤油炒め

【材料/2人分】
じゃがいも…2個(250g)
エリンギ…2本(100g)
バター…10g
醤油…10g
油…適量
黒こしょう…適量

【作り方】
1.じゃがいもはよく洗って皮のまま千切りにし、
水にさらしてから水気をきる。
エリンギもじゃがいもと同じくらいの長さに切り、
食べやすい大きさに手で裂いておく。

2.フライパンを中火にかけて油を少なめにひいて
ジャガイモを炒め、透き通ってきたら
エリンギも入れて炒め併せる。
バターを入れ、溶けたら醤油を回しかける。
黒こしょうを多めにひいて、あればネギなどを飾る。