14. 塩と麹で作る調味料

 醤油を作るには、醤油用の大豆と麦の麹を手に入れ、食塩水を混ぜ、時々混ぜながら1年間熟成させ、ろ過してできあがり…なんて書いても「1年も待つなんて長すぎる!」って思ってなかなか家では作らないですよね。実は日本には、麹さえ手にはいればもっと簡単に作れる調味料があるのです。麹と塩と水を混ぜるだけで、1〜2週間ほどで『塩麹』という手作り調味料が完成します! でも塩麹って一体どんなものなんでしょうか?
 日本の北の地方では、塩麹に似た三五八漬け(※)というものが昔からあり、野菜を漬けたり、肉や魚を漬けて焼いて食べていました。でも塩麹は一部の人が使っていただけで全国的には知られていませんでした。私が昔、麹に興味を持ちだした頃に読んだマンガにこの『塩麹』というものが少しだけ掲載されていたのを思い出し、真似して作ってみました。米麹と塩をよくまぜ、そこに水を加えて一日一回混ぜ、1〜2週間してバナナの様な発酵した香りがしてきたらできあがり、というもの。「え、バナナ? 一体どんな味の調味料なの?」と疑問だらけだったけど、私は好奇心旺盛なので、とりあえずその通りに作ってみました。
 10日ほどたつと、よくわからないドロドロしたものができあがりました。バナナ…と言われたらそんな気もするし、違うような気もするし…。なにせ参考にしたのがマンガだったので、正解の味も見た目もわからないのです。試しにきゅうりを切って塩麹をまぶし、ビニール袋に入れて空気を抜いて冷蔵庫で30分〜1晩くらい寝かせてみました。これは普通の「きゅうりの塩漬け」の作り方と同じなのですが、塩麹で漬けると味に深みが出てうまみもあっておいしいのです!「こんなに簡単においしい漬け物が漬けられるなんて、私は天才かもしれない!」と感動しました。さらに鶏肉に塩麹をまぶし、同じようにビニール袋に入れて漬けて焼いてみると、肉がやわらかくなって、味もうまみがあっておいしいのです! もうこうなったら正解なんてどうでもよくなり、自分が作った塩麹の味に夢中になり、あまりに好きすぎて、とうとう塩麹を色々とアレンジした麹料理の本を出版しました! その後、日本では塩麹が大流行したのです。

(※三五八(358)漬けは塩3:麹5:ごはん8の割合で混ぜて寝かせた漬け床。塩麹より甘くてとろりとしている)

 




塩麹の作り方

麹が手に入れば塩麹は簡単に作る事ができます。

【材料/作りやすい分量】
麹…200g
塩…60g
水…乾燥麹の場合300ml
生麹の場合200ml
A
【作り方】
1.ボウルに麹と塩をいれてよく混ぜる。B
2.容器にいれて水を注ぎ、ふたをゆるく閉める。C
3.常温に置いて一日一回混ぜ、ふわっと麹の香りがたち、
麹の粒がやわらかくなったら(10日〜2週間ほど)できあがり!
常温、または冷蔵庫で保存します。

※しばらくすると、麹が水分を吸ってパサパサの状態になり、
それが2〜3日続きますが、心配しないでください。
右下が10日ほどたったもの、右上が1ヶ月ほどたったものです。
時間が経つと麹が液化してトロトロになってきます。D

※ 向かって左が生麹、右が乾燥麹。
塊になってる麹をほぐすとぱらぱらの米粒状態になり、
見た目は生麹も乾燥麹もほとんど変わりません。
生麹はほんの少しだけ水分を含んでいるので日持ちがしませんが、
乾燥麹は常温で置いておいても日持ちがします。ですが念のため、
冷蔵庫で保存してください。E

※ 水は軟水のミネラルウォーターを、
塩は自然塩をお使いになるといいと思います。

※ 暖かい方が早くできあがります。
次に造るときは、古い塩麹を少し混ぜると、早くできあがります!

※ 塩麹は発酵途中でガスを発生させてあふれる事があるので、
少し大きめの容器に入れてください。
ふたはゆるめにしめてください。

※ 塩の量を増やしてもかまいません(保存性が高まります)。
ですが、減らさないで下さい。
このレシピは食品に浸透して、保存性もある塩分量です。
塩分が気になる方は使用量を減らして調節をしてください。

※ 完成したら冷蔵庫で保存した方が安全ですが、
すごく暑い場所でないなら常温でも大丈夫です
(自己責任でお願いします)。
ただ、カビが生えたり異臭がしたら直ちに破棄してください。

※ 高さのある容器にスプーンと一緒に入れておくと、
使う時に便利です。F

A B
C D
E F