13. Gyosho - 魚から作る醤油

 日本や中国や東南アジア諸国には魚から作る醤油、魚醤(ぎょしょう)があります。魚を塩漬けにした液体の事で、ベトナムのニョクマム、タイのナンプラーなど。日本では大豆から作った醤油ほど一般的ではないのですが、昔から色んな地域で魚を使った魚醤が作られています(※)。
 魚醤を作るにはまず、魚を塩漬けにします。すると、塩が雑菌の繁殖を防ぎながら、魚の内臓にいる酵素が、自分自身(魚)を分解するので、だいたい1年くらいでドロドロとした液体なります。その液体をしぼったものが魚醤になります。自分が持っている酵素で自分を分解するなんて、微生物は本当におもしろいですね。塩と一緒に麹を加える事もあります。麹を加える事により、発酵・熟成時間が変わったり、魚の臭みを抑えたり、味や風味がよくなります。
 正直に言うと、魚醤の香りは最初「臭い!」と思いました。香りの強いチーズのような感じでしょうか。世界には「臭いけどおいしい」と言われる食品が色々あるけど、その仲間に入れていいと思います。臭いけど慣れてくると強烈に好きになってしまうんです。ドラマや映画でよくある、とんでもない行動をする異性の事が、最初は大嫌いなんだけど、そのうちそれがクセになって大好きになる…というのに似てますね。私は魚醤とごま油の組み合わせが好きで、豆腐にかけたり、麺類にからめたりして楽しんでいます。
 最近ではこの魚醤と醤油を組み合わせたようなものも作られています。鮭の魚醤に加える麹を、醤油用の大豆と小麦の麹を使うのです。すると鮭のうまみと大豆のうまみが味わえる醤油ができあがるという訳ですね。贅沢〜! しかもできあがるまで4〜5ヶ月と、時間も短縮されて、いいことづくめ! 醤油はまだまだ色々な進化をしていきそうです。
 余談ですが、日本には魚醤に似た、臭くて塩辛い発酵した液体に魚を漬け込み、天日干しした『くさや』という魚の干物があります。これを焼いて食べるのですが、その匂いが臭いのなんの! 私の父が好きで、家で焼いたりした日にはもう、本気で怒って父とケンカしていました。しかし時の流れはおもしろいもので、私も歳をとるごとにだんだん好きになっていき、今では平気な顔しておいしくいただいております。ただ臭いだけではなく、発酵した臭さはおいしさなのです!

(※秋田県のハタハタで作った『しょっつる』、石川県のいわしなどで作った『いしる』、香川県のイカナゴで作った『いかなご醤油』など)

 




人参のエスニック炒め

材料/3〜4人分】
人参…2本(400g)
ピーナツ…(80g)
A.魚醤(※)…大さじ1〜2(15g〜30g)
 蜂蜜…小さじ2(15g)
 酢…小さじ1(5g)
油…適量
香草(パクチー、コリアンダー)…適量

【作り方】
1.人参はスライサーなどで千切りに切る。
ピーナツは包丁で粗くきざむ。
2.フライパンを中火で熱して油をひいて人参を炒め、
しんなりしてきたらAとピーナツを加えて
炒めあわせて器に盛り、
きざんだ香草をかけてできあがり。

※魚醤は種類によって塩分が違うので、最初は少なめにいれてみてください。